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第7官界彷徨

第7官界彷徨

薔薇豪城作品集その1・短歌

今までの作品、いろいろやったけど全然モノにならなかった作品たちの引き出し。いつか楽しく読み直す日のために。
その1/短歌
死に近き
 病室の暮らしに馴れてここに一つ管理体制と従属のかたち
 限界を知る気楽さか回診の医師はいつでも饒舌にして
 漸くに頼みあてたる家政婦の手際の良さを父は厭へり
 日の昏れに抗癌剤より覚醒し我を抱きて声ひそめ泣く
 死に近き父の3匙の粥のためミネラルウオーターにて新米を炊く
 病院の営利のためか検査にと死に近き父の痰採りてゆく
 死に近き父の傍へに一人食む夕餉現身の食欲を恥づ
 心臓の停止を告ぐるENDの字モニター画面に青く舞ひ出る
 太き字も細字も端正に書きし父の棺に入れし3本の筆
 ふり向けば父を看取りに通ひたる道つづきをり葬儀の果てて



ギンの死
雨だれの音と思ひて目覚めれば夜半に病犬の水を飲む音
首輪抜け町を走りて帰り来しけものの臭い今はもう無く
熱あれば居場所時折変えて伏す声をかければ尾を立て応ふ
丁重な獣医の往診受けながら内戦の国の犬たち思う
わが膝に頭と胸とを乗せしまま痙攣ののち息の止まりぬ
息絶えしギンの心臓5分ほど激しく動きやがて静止す
死んだなら犬も仏になれるかも橘寺の香を手向ける


ふるさとの家
エアコンを外せし穴より月明かり住む人のなき生家に泊まる
電源を入れれば動くモーターの自家水道より出る濁り水
出る時に掃除をしたる台所の油汚れが時経ちて浮く
物置に代々住み着きしキジ猫が警戒しつつこちら窺う
本尊も位牌も片付けし仏壇に死にたる人の気配をさがす
家具のなき生家の居間に寝ころびて画鋲の痕を目で数えおり
母の植えし水木の花も咲き揃い住む人のなき故郷の家
楠の木の梢しきりに揺れていて高みに風の道のあるらし
大きなる屋根持つ家は四月の陽に闇にも似たる翳りを保つ


1995年
廃村
山越へて廃村あれば水屋のあたり人の暮らしのあと懐かしむ
晒さるる日を思ひてか廃屋に一升瓶のきちんと並ぶ
女の子も生まれしならん廃村に桐の大樹の花咲き満つる
追原とふ開墾村は百年を経て廃村となりて静もる
鶴嘴の届く高さに掘られたるトンネルありてそま道つづく
けものみちに林道できてコンクリートに窪みて続く鹿の足跡


1998年
8月6日・ヒロシマ
爆心地島外科医院は今もなお島外科医院にしてペチュニアゆれる
20万人の命日なれば朝のバスに喪服の人ら多く乗り来る
基地見学の船より見ゆる呉港は火薬庫弾薬庫そして軍艦
民間人立ち入り禁止の十のブイ呉の港をほぼ占領す
見渡せばどこにも軍艦の姿ある非日常が呉の日常
海軍の旗を立てたる潜水艦港に2艘浮かぶ不気味さ
広島を逃れる人と行く人と阿鼻叫喚の海沿いの道
浅きゆえ隠戸の瀬戸は軍艦を拒みて平和な海の風景
護衛官の乗組員がわが船に手を振る過去の亡霊のごと
侵略戦争の文字削られし韓国の被爆者の碑も供花に埋もれる
マスコミの報道のかたより糺したいとパキスタンからの美しき使者
平和公園に並ぶ写真は八月のあの日この場所に住みいし人ら
この町とともに消えたる人の写真に毎年会いに来る人も高齢
全ての目がレンズを凝視し訴えるあの日天神町に住みいし人ら
炎熱の平和式典原稿を棒読みの総理の声の空虚さ


相聞
・死刑囚と呼ばれるよりは呼び捨ての今がまだしもよろしかりける ひろし
・死刑囚とよばれるなかれ獄中に君呼び捨てられて19年過ぐ 

2010年2月
=鬼泪山伝説今昔=
             
其の1
権力に逆らうものは鬼とされこの上総にも残る伝説
 × × ×
幼き日校歌に歌いし鬼泪山木々の緑は水も育み
大和政権から村守るため戦いし阿久留王の墓は集落の下
残虐な殺戮もありし血の歴史「ちくさ」海岸を夕陽が染める
鬼泣くと伝説残る鬼泪山村人たちの誇れる歴史
神野寺の本尊となりし阿久留王今もふるさとを守り鎮座す
寅年は阿久留王秘仏の御開帳慕い詣でる人らが集う
冬イチゴや美男カズラの赤き実を教えられつつ湧水目指す
いちめんにナズナ花咲く土手のありフィールド調査は湧水地そば
山の神水の神ともに祀られて古代よりこの地の水源守る
背負い来し日本酒注ぐ山の神の小さな祠の石の杯

其の2
鬼泪山のそばに並びし浅間山削り取られて跡形もなし
鬼泪山の山砂採取を止めるべく全戸署名の広がる上総
むき出しの山肌に動く重機あり水を育む木々なぎ倒し
地場産業は山砂というを憚らぬ政治家のいて山は消えゆく
山砂の採取に動くほとんどの金はかの政治家に流れてゆくか
たどり着けば山の砂地に音もなく水の湧き来て川となりゆく
いく筋もの湧水静かに加わりて細き流れは海に向かえり
平成の阿久留王我ら鬼となりふるさとの山守りて行かむ
 × × ×
鬼の血に染められしとう川は今は染川としてやさしく流る
         
2011年2月
ブログの日々
インターネットのブログはじめる我が思い多くの人につながらんとして
ブログの名は治安維持法にて獄死せし戸坂潤の俳号もじる
名前から尋ねて来ましたという人は戸坂潤の哲学語る
北海道のブログの友が5月には平和行進の通過告げくる
永瀬清子の平和行進の詩を書けば自分の町なりとメールが届く
啄木の節子が通いし細道の傍に住んでいますと知らせ来る人
開通の新幹線の写真載せ近くに節子の小道もありと
覆面の気軽さもありサイバー美女の「護憲派アマゾネス」に参加してみる
6日9日はヒロシマ・ナガサキを書き継いでネットの上の6・9行動
連絡を寄越さぬ子持てばブログにてよその息子の相談に乗る
友が皆ブログを黄色に染めて行く沖縄知事選挙応援の意思
争点をぼかすつもりか相手候補も同じ黄色のシンボルカラー
座り込みの辺野古のブログにいつも写るテント犬ポチのりりしい姿
ポチの話題書けばアクセス多くして愛犬家たちの平和つながり
情勢厳しき辺野古の応援に行く人に「毎日見てるよ」とポチへの伝言
「南京事件」書けばネットの右翼来てブログ炎上すたちまちのうち
南京・靖国にことさら強き反発は彼らも未だ過去引きずるか
卑劣なるネット右翼の書き込みは応ぜぬままにただ鎮火待つ
炎上の後に広がるブログの輪たしかな平和を望む人の輪 


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